三匹の悪魔と従者たち
第9章 地上の月
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あの夜のことを思い出すと、なんとも苦い気持ちが込み上げてくるゴウキだった。
「あんの女。 思ったとおりじゃねぇか。 ぴったりまんま、分かりやす過ぎるぐらいだ」
再び頭を抱えなおし、自分が馬鹿だったのかと思わないこともない。
逆に、責任を負わせるような言い方だったのかも知れない。
なにも言わずにゾフィーを攫ってそう出来たのなら、どんなによかっただろう。 ゴウキは悔しげに歯噛みをした。
これ以上に、一体なにをすればいいのか。
持っているもののすべてを捧げ、それでも足りないのか。
「はあ……」
俺の手には負えない。 仕方なしにでもそう思うしかない、ゴウキが対峙しなければならない結論だった。
まだ朝が早いために城外には薄らと霧がかかり、それは益々陰鬱になりそうな景色を彼の前に映していた。
ギリギリ城の敷地内といっても、時間的にも外は危険ではある。
丸腰の彼はそれでももう、どうにでもなれという気分だった。
「にしても、アイツどうすんだろ……まさか本当にこのまま」
もうなにも話せないままに?
悪い予感がゴウキの頭をよぎった。
ユーゴの話を思い出したからだ。
(そういえば、アイシャも従者を辞めて、突然姿を消)
「ゴウキ様あ! そんなところにひっそりとなにしてんですか。 サタン様が王の間でお待ちですよ!!」
「あ、やべ。 忘れてた」
こっちは取り込み中だってのに。 塀の上から呼びかけてきた部下に気付いて、のろのろとゴウキが立ち上がる。
あれからちょうど、一ヶ月経ったのか。 まあ、なにもしなかったって、わけでもねぇのかな。 ぼんやりとそんなことを考えながら城内への階段を上り始めた。