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三匹の悪魔と従者たち

第9章 地上の月


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『結婚してくれと言ってる』


ゾフィーがいまいち要領を得ない顔をしていたので、ゴウキは率直に彼女に申し込んだ。


「それが本心だとして」


その後僅かに開いていた口を結び、表情をすっと引き締めた彼女が眉を寄せた。


『それを断って、私がここに居られると思うのか。 それを分かっていてお前は言っているのか?』

『ああ』


即答したのは、こうなると予測していたいくつかの彼女の反応の中で、これは上位に入るとゴウキが思っていたからだ。


『純粋な魔族ではなく、城兵の私が認められるわけがないだろう』

『やってみなきゃ分かんねぇだろうが。 仮にそうだったら、俺もここを出る』


ゾフィーを失うかそれを得るか。 言葉にすると失うと思い込んでいた、それが不味かった。
それは決してイコールではないのだと、ゴウキは彼女に対して想いを込めて意思を示した。

もしも彼女がどんな時でも傍にいると思っていてくれるならば、自分もそれに応えなければならない。



『────────』


結婚を申し込んだときよりも呆気に取られたゾフィーの様子だった。


『そんだけの覚悟はあんだよ。 なにしたって暮らしていける自信はある』


高い身体能力を持ち高度な教育を受けてきた彼においてそれは事実である。
ゾフィーが華美な暮らしに興味がないことも、もちろん彼は知っている。

それに対し、まるで今にも泣き出しそうな顔で、ゾフィーは首を横に振ったのだ。



『………そんなものを、私はお前に望んでいたわけじゃない』


なにも言えずに固まるしかなかったゴウキを置いて、ゾフィーはドレスの裾をひるがえし彼の自室を出て行った。

彼女とは、それきりだった。





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