三匹の悪魔と従者たち
第10章 再び王の間へ
王がそう言いかけて「……あの。 父さん」 おずおずと片手を上げた息子に気付き、「なんだユーゴ」と声をかける。
「僕は辞退するよ。 向いていないから」
それを聞いた王が思わずたんっ、と床を踏み鳴らそうとしたが足が届かなかったため、つま先がすかっと空を蹴った。
それを誤魔化すように咳ばらいをし、末っ子に諭すような眼を向ける。
「………向き不向きではないのだ。 これは個々の意欲や使命感、甲斐性に対する見定めでもあった。 そもそも、もうお前たちは全員成人を超え、対外的にも後継を示しておかなければならない時期なのだぞ」
「でも僕はそんなもののために、アイシャと結婚したいと思ったわけじゃない」
普段は大人しい彼にそうきっぱりと言われては、サタンの方も困ってしまう。
だが、もう次期後継者のお披露目兼婚約だといって、今日から一週間後に魔界内部や他族へと向けて(勝手に)告知をしてしまっていた。
いつも息子たちは自分の期待に応えてくれていたので、てっきり今回もそうなのだとサタンは目論んでいたのだった。
「………では、誰が相応しいと? 」
「うーん。 誰かっていうと」
今回のことで、三人はそれぞれの自分の大切なものに気が付いた。
それぞれの大切なもの。 それから、王子の、兄弟に対する評価と愛情。
この偉大な王はもしかして、そんなものを彼らに再認識させる機会を与えたのかもしれない。……のかは相変わらず、さっぱり分からない。
それはともかくも。