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三匹の悪魔と従者たち

第5章 ユーゴ × アイシャ


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「ところでアイシャのことなのですが………」


職務の手伝いに彼の脇に立ち書類の整理をしてくれていたスレイが言いづらそうに口を開いた。

相変わらず彼女はあれから姿を見せていなかったが、きっと生まれたばかりの妹に時間を取られてるんだろう。 などとユーゴは気楽に考えていた。

とはいえ、そろそろ周りに変に思われているのかもしれない。


「従者だからって別にちょっとぐらい来なくっても問題ないでしょ。 有休とでも言ってうまく誤魔化しといてくれる?」


ジンのように毎晩寝室を共にするような、いつもべったりという訳でもないが、王子のプライベートには普通はそれぞれの従者が傍にいるものである。


「いえそれが。 どうもここを辞めるとの連絡が入ったらしく」


「────────えっ?」


若干困った表情でそう伝えてきたスレイに、ユーゴは目を通していた用紙から顔を上げた。


「あの録でもない親から? アイシャが小さい時に、身売りなんて外聞が悪いだとか言われてたよね」


城に幼い彼女を連れてきた時にはニコニコしていたが、サタンが居なくなった途端に『でも結構な金をもらえるのなら』『しっかり励むのよアイシャ』などと、彼女の父母が意地の悪い目つきをしてアイシャに言いつけていたあの光景を、ユーゴは忘れていなかった。
のちにユーゴが従者制度を否定するようになった要因である。


「いいえ。 連絡を受けたのはアイシャ本人からです」

「そんなはずないでしょ?」

「確かに昨日そうことづかりました」

「じゃ……だって、駄目でしょそんなの!」


彼の手から滑り落ちた用紙を拾い上げ、手渡そうとするスレイを無視したユーゴが口調を荒げる。


「ユーゴ様?」




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