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三匹の悪魔と従者たち

第5章 ユーゴ × アイシャ



滅多に感情を荒らげない彼にスレイが不審な目を向け、ユーゴが我に返った。
平静を装って話しながら、視線を受け取った紙片に滑らせた。


「だって……ああ、そう。 あの、あれ。 大量の兄弟とか。 これからどうやって暮らしていくのさ?」


だがその文字がユーゴの頭に入ってこない。


「そう言われましても」

「……っあーもー! あの馬鹿女!」


溜まりかねたように、再び憤懣やるかたない様子でユーゴがデスクに突っ伏した。


「ユーゴ様。 お口が悪うございます」

「スレイ。 アイシャだよ!? あんなの本気でその辺で身売りしかねないよ? ああ見えてアイシャって馬鹿みたいにお人好しで貧乏なくせに世間知らずで優しいんだし、最近妹も生まれたって」


「どうされますか?」


そんな彼の頭の上にスレイの冷静沈着な声が降ってくる。


「どうって。 アイシャは妹みたいなものなんだから、放っておけないよ。 遣いを寄越してくれる? 無理矢理でもいいから説得させる」

「お断りします」


静かにだがきっぱりとそう言われ、思わず「は?」とユーゴが訊き返した。


「アイシャが自分で選んだのです。 彼女はユーゴ様の妹でも、もう子供でも無いのですよ」


子供時代の我儘なら諌められたものだが、スレイがユーゴに逆らったことなどない。 混乱したユーゴは咄嗟に言葉が出てこなかった。


「スレイ? あの………」

「では私はこれで失礼します」





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