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三匹の悪魔と従者たち

第1章 我儘サタン



玉座の前でめいめいに胡座をかき、やる気なさげに文句を垂れる王子を前にし、サタンは眉を歪めると大げさにため息をついた。


「なんでこんな息子に育ってしまったんだろうなあ……ああ、最愛にして邪悪の化身。 我が妻、リリスが生きてくれてさえいれば」


小柄な身のせいで豪奢な玉座の脚に浮いたつま先を揺らしながら、サタンは自らとは逆に、美丈夫に育った彼らの頭上あたりに亡き妻の面影を追う。


「せっかくのわしの後継者選びだというのに。 お前たちに野心はないのか? そのために必須である結婚相手を見つけて来いと言ってるだけなのに。 それでも悪魔の端くれなのか」


彼が虚空に観ていた愛妻の幻影がぼやけ、サタンのつぶらな黒い瞳がうるんだかと思うと、それきり首を下げて俯いてしまった。




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