三匹の悪魔と従者たち
第5章 ユーゴ × アイシャ
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「アイシャ。 今日はスコーン用意したけど、また持って帰る?」
両開きの扉の隙間から聞こえてきた、そののんびりとした声に反応はするも、横に寝転がったままのアイシャは口をパクパクさせるだけで言葉が出なかった。
ユーゴが部屋を見回し、彼女を襲っていた道具たちが筆立てやデスク、本棚の間。 そんな元の場所にいそいそと帰っていった。
彼が戻ってきたら思いっきり怒ってやろうとか怒鳴ってなじってやろうとか彼女は思っていたのだが。
「ゆ、ユーゴお……」
アイシャはそう弱々しく言うのが精一杯だった。
「ん?」
気付けば手首も解かれており、呼ばれて腰を曲げ彼女を覗き込んできたユーゴの首根っこに、アイシャは思いっ切りしがみついた。
「この、悪魔!!!」
それでもこれだけは言っておきたかった。
実際はただの事実なだけで悪口にもなってないのだが。
「色々出来上がってるね。 またお漏らししちゃった?」
「あんっ!」
ギュッと抱き締められただけでアイシャの体が強ばって恥ずかしい声が出る。
真っ赤になっているアイシャの両頬を手のひらで挟んできたユーゴの目の奥。 そこに情欲を滲ませながらユーゴが彼女を見詰めた。
「蕩けた顔しちゃって。ベッドに運んでいい?」
「い……いい。 けど、漏らしてないものっ」
「分かってるよ、別の意味でしょ。 スカートビショビショなってるの。 アイシャの匂いだこれ」
「へ、変態!! やっぱりやだっ!」
「そうだね。 認める。じゃあ、服が乾くまでの間ならどう? 優しくするから」
彼の腕の中で羞恥の余りじたばたし始めるアイシャだったが、ユーゴはなんとしてでも彼女をものにするつもりだった。
「か…わくのって、どれ位…?」
しらっとした様子で甘くささやけば、すぐに油断して隙を見せる彼女に対して益々そう思う。
「さあ。 一時間位じゃないの」
そんなもの、いくらだって遅らせることは出来るんだけど。 そう心の中で呟きながら、アイシャを胸に抱いたユーゴは元のようにきちんと整った書斎を見渡し、そっと扉を閉めてそこをあとにした。