三匹の悪魔と従者たち
第7章 城外の朝
「終わったか。 アイシャのことは城に戻ってから聞いていいか? 無理にとは言わねぇが」
ユーゴはそれには曖昧な返事をして、二人は帰路についた。
帰りの道中は結界にヒビが入るほどのちょっとした魔物が襲ってきたが、その隙間から入り込んできたそれらにユーゴが細かなものを抑え、ゴウキが比較的大物を仕留めた。
低級魔とは違い、はっきりとした形を成すそれは、ゴウキほどの大きさがあり分厚い毛に覆われ、口元に四本の牙を持つものであった。
内臓を傷付けると味が悪くなるので、ゴウキは向かってきたそれに対し躊躇いなくまずは目を狙った。
喉元を切りつけて怯んだそれを避けてから、とどめは斜め耳の後ろの急所に剣先を深く突き立てて終わった。
「喉やった時、牙に少し掠ったな。 俺もまだまだだ」
力で押すタイプの彼は若干大雑把ではあるが、分厚い被毛や皮膚を持つこのような獲物には適している。
剣の刃こぼれに舌打ちしつつも、中途半端に動ける状態だと危ないので、完全に絶命するまで待ってからゴウキがそれを抱えた。
「猪みたいな奴だな。 持ち帰って食おうぜ。 ごめんな。 帰ったらお前にもやるから、少しだけ乗せてくれるか」
形は猪で顔はどこかゴリラのような。 かっと見開かれた目はどんよりと赤黒く、鼻なのか唇なのか、深いしわが刻まれている。
そんな見た目は置いておいて、地上に流通するほど数は取れないが魔物はしっかりと火を通せば美味なのである。
ユーゴも油断さえしなければそんなものに負けることはないが、一番力のある物に反応し、真っ先に立ち向かっていくのはゴウキの資質と自信の表れなのだろう。
いつも何事に対しても判断に迷いの無い彼をまた、ユーゴの方も尊敬している。