三匹の悪魔と従者たち
第8章 持たざる者
いくらなんでもこれはない。
ゴウキとユーゴの率直な感想である。
三人の王子は来客室の隣にある控えの事務室にいた。
来客室と違い人を迎えるしつらえはないが、一応の事務用品なども揃っており、内輪の打ち合わせにも使われるスペースであった。
革張りの長椅子にジンが座っている。
その向かい側に残りの二人が位置していたが、ゴウキは天井の染みの数を数え、ユーゴはその部屋の隅にあるカレンダーの数字の累乗にチャレンジしていた。
「フーン……なるほどね」
城の外から帰ってきた二人の話を聞き終わり、銀色に伏せられたまつ毛を微動だにせず、その反射で薄青くも見える瞳を斜め下に向けてジンが呟いた。
「いやあの。 ジン、俺たちは真面目な話をしに来たんだけど」
「あの美しくない魔物に関してのみでいえば、おれはユーゴの意見に賛成だったんだけどね。 広大なあの荒れ地に地上のような花々が咲き乱れれば、訪れる者の荒んだ心さえ癒されそうなものじゃないか」
「癒されるというか、まあ……別の意味では……」
彫刻のように整った顔のジンの膝の上にちょこんと乗っている、これもまた人形のように麗しい美少女であるアリスというそんな二人なのが、まるで非現実的な絵画を見ている気持ちにもなるのが救いだった。
ただしアリスのスカートの中。
彼女の開かれた両ふくらはぎの長さの布に、隠されている見えないそこが、今どんな淫猥な状態であるのかは、彼女が座っている位置的にも彼女の蕩けきった雌の表情からも明らかである。
顔が赤かったので、初めはアリスの具合でも悪いのかとユーゴは思ったものの、ジンが身動ぎするたびに悩ましげに眉を寄せ、まるでゴウキら二人など居ないもののように、虚ろな瞳を薄く開いて浅い呼吸を繰り返している。