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三匹の悪魔と従者たち

第8章 持たざる者



それに対してゴウキたちは何か言おうとはしたのだが。

ジンを呼びに部屋に行った際に、そこを清掃していた女中からなんだか意味ありげな表情で、ここにいると言われた。

そして訪ねてみるとこの状況で自然に話をし始めようとする彼に対し、そのタイミングを逃してしまったのだった。


「静かにするように言い付けてあるから気にしないでね」 白々とそう言ったジンに「ペットか」と辛うじてゴウキがツッコミを入れたのが精一杯だった。



「9455」


30までの計算を終えたユーゴはなんで今この溜まりに溜まってるタイミングで。 と不自然に深く組んだ足を崩せない。
圧迫でかなりキツいが我慢だ。


そんな彼らに頓着しない様子で、ジンが口を開いた。


「でも実際に、ルナやユーゴは美しいんだよね」

「は?」


冒頭の突拍子のなさにゴウキが訊き返した。


「例えばさ。 ここの世界で魔力が高いとされる資質の持ち主。 醜い彼らが惹かれるように寄っていく対象は決して自身と同列の者じゃない。 『魔』という一文字が共通しているだけで、それは魔界の美であり力でもある」

「まあ、そうかもな?」


ジンが挙げた二人は言わずもがな。
サタンも今は太ったカピバラみたいな外見だが昔は美少年だったらしく、スレイに至ってはオールバックに流した髪や洗練された身なりで、歳なりの渋さが表に滲み出ている男性である。




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