小さな花
第11章 --1year later--
―――12月初旬。
「今度は本当に結婚します」
今日はシンくんが幼少期を過ごした孤児院に来ている。
彼の育ての親、川倉さんは御年70歳にはとても見えない元気な人だった。
それはよかったと何度も微笑んでは、シンくんと私とを愛おしそうに交互に見つめる。
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シンくんのお見舞いに由梨さんがやってきたあの日から、しばらくしつこい電話が続いた。
アスクにも週に1度はやってきてシンくんを食事に誘っていたみたい。
それでもシンくんはほぼ毎日私のアパートに来るか、私を飲みに連れ出しては彼のマンションに連れ帰るかだった。
シンくんとの風邪薬1万円事件以来、カズヤくんからの連絡はない。
1度は商店街でたまたますれ違ったけれど、向こうは気まずそうに会釈をして去っていった。
「引越すか。」
年末に私のアパートの給湯器が壊れた事をきっかけに、シンくんはそう言った。
かどやとは少し遠くなったけれど、綺麗な新築マンションに引越したのが先月のことだ。
私もシンくんも荷物が少なく、引っ越しはすぐに終わった。
出会ったあの焼き鳥屋で乾杯してすぐ、「結婚しよう」と言われた。
急すぎてびっくりしたけれど、すぐに承諾した。
そして今に至る。
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クリスマスがやってきた。
初めて抱かれてから1年が経ったことを実感する。
「まさか1年で結婚まで話が進むなんて。」
「ま、子供はまだ先な。もっと抱いてから。」
「えっち!」