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嵐びーえる。

第16章 番外編③ 真実のその後で

高階side


渡海先生がいなくなった後、私は、息つく間もなく働いた。




不思議と、疲れは感じなかった。



粗方の研究を終え、論文をまとめようと、医局に戻る。




花「渡海先生が?」



主をなくした仮眠室から、声が聞こえた。

飛び出た名に、無意識のうちにそちらへと足を向けていたようだ。仮眠室のドアに、体を預ける。


木「手に入れたお金はすべて、医療過誤で苦しむ人の支援団体に、寄付していたみたいです」


世「たしかに、渡海先生がお金を使ってるとこ、見たことなかったし…」


花「はい」




言われてはたと、気が付いた。あれだけの大金を巻き上げていたはずの渡海先生だが、住まいは豪勢でない、どころか病院だったし、着るもの食べるものにも気を使っていた覚えはない。




論文を書こうと、背を浮かせた時だった。



木「そういえば、先日、振り込み人不明の入金があったそうなんです。









その額、一千万」



花「一千万?」




世「てことは…まさか」





目の裏に、術着姿の渡海先生がうつった。






渡「邪魔」









途方に暮れる執刀医と対峙し、一言言い放つ。








渡「一千万で、揉み消してやるよ」








瞼を、きつく押さえた。








END



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