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嵐びーえる。

第16章 番外編③ 真実のその後で

あれから、高階先生は、東城大のブレーンとして、最新医療を取り入れながら、毎日目まぐるしく働いていた。

けれど時折どこか、寂しそうな顔を見せる。それが、僕の救いだった。













僕はあれから毎日、仮眠室に入り浸っている。

今日もまた、いつも渡海先生が使っていたベッドに、横になる。



花「渡海先生が?」


木「手に入れたお金はすべて、医療過誤で苦しむ人の支援団体に、寄付していたみたいです」


世「たしかに、渡海先生がお金を使ってるとこ、見たことなかったし…」


花「はい。


…世良先生も食べます?」



急に無邪気な笑顔を浮かべ、しゃもじを持った花房さんが振り返る。


ソファでは、木下さんが卵かけご飯を口に運んでいた。







世「だから、食べませんって。渡海先生と食べるって決めてるんです」





花「いつになるんですかねそれ」


世「根に持ってるんで」







木「そういえば、先日、振り込み人不明の入金があったそうなんです。







その額、一千万」




花「一千万?」




世「てことは…まさか」




反射的に起き上がった僕の耳に、慣れ親しんだあの声が聞こえてくる。







渡「邪魔」







目だけで、睨め上げるように相手を見つめる。







渡「一千万で、揉み消してやるよ」







口元が、ニヤリと上がったのが、目に見えるように分かる。



世「渡海先生」



小さく、呼びかけた。


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