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惑星ミラーミラー

第9章 〜ミラーミラーの秘密〜

(1)

行為が終わったあともソニアは動く気になれなかった


その空虚な感情のソニアの気持ちも知らず、フレッドはソニアにやさしいキスをした


長い沈黙のあと、


ようやく話しをしたのはソニアのほうからだった


「いつも……ママとこんな事を…?」


「うん、ママが頑張ったねって褒めてくれた」


「そう……」


少年が褒めて欲しそうな顔をしていることはソニアにもわかったが、とても彼を褒めてあげられるような気分にはなれなかった


「ちょっと……眠らせてくれる?」



ソニアは言葉を選んで少年を突き放した


「うん、隣にいてるね」


フレッドは再びソニアにキスをすると部屋を出ていった



ソニアはぼんやりと天井を見つめる

どこを見てるわけでもない


〈フレッドに悪気は無い……〉


ソニアはますます空虚な気持ちが大きくなる


〈なんだろ……、ママさん……ママさんがこうしたかったの?

 寂しかったのはフレッド?

 それともママさん、あなたなの?〉


ソニアはあたまがぐるぐるまわり、

疲労感もともなり、眠ってしまった…




股からドロリと液体が落ちていく違和感で目が覚めた


ひと眠りして脳が記憶を整理してくれたおかげなのか、さきほどの苛立ちや不安な気持ちは少しだけ薄らいでいた


ソニアは何故か、小さい頃の記憶を思い出していた


お母さんがパンを焼いてくれている


出来たよ、とテーブルにたくさんのパンが盛られる


パパの膝の上に乗って、小さなソニアは焼き立てのパンに手を伸ばす


両頬を大きくふくらませ、パパとママが笑顔になる



そのあとの記憶には父親が居ない


母親と二人で暮らす小さなアパート


雑居なビルがひしめきあうアパートには明るい陽射しは挿さなかった


母親は作り笑いをしていることは少女になったソニアでもわかった


母親の笑顔の先は焦燥感が見て感じ取れた


ママも寂しかったんだ


ソニアが働きはじめた頃、母親はうだつのあがらないような冴えない男と部屋を出ていった


ソニアはボーイフレンドと暮らし始め、母親がどんな気持ちで日々暮らしていたか思いをはせる時間はなかった


女性は母親になっても女性だ


フレッドの母親を責めてはいけない


母ひとり子ひとり、過酷で孤独な日常だったのだ

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