テキストサイズ

君と共依存

第1章 プロローグ

幼い頃の記憶。
乱雑に散らかった部屋、その中で絡み合う男女。
私は部屋の隅で、必死に息を殺し耳を塞いでいた。
耳に流れ込むのは、まるで化け物の様に喘ぐ実の母親の嬌声。
そして地鳴りの様に響く、男のうめき声だ。
育児放棄し男とのセックスに明け暮れる母親は、まるで獣の様で、私は幼心に吐き気を覚えた。

成長して14歳になった頃、私は母親の客に犯される。
痛みと気持ち悪さと絶望で呆然とする私に、母親はこう言ってのけた。
「これからはあんたで稼げばいいから、楽になるわ」
この手で、この目の前の化け物を殺してやりたいと思った。
そしてこんな女の、生活の糧になる屈辱を味わうくらいなら、自分で自分の身体で稼ごうと私は決めた。

それからずっと、一人きりで生きてきた。
結局は、私も母親と同じく毎日獣の様に喘ぎ、そしてそれを生活の糧にして生きている。

愛なんて知らない、愛なんて必要ない。
どうせ人間なんて、死ぬための暇つぶしに生きているだけだ。
毎日汚い汚物を体の中に入れて、感じてるフリをして、そして汚れた紙切れを受け取るその繰り返しの毎日。
そんな人生なんて、なんの意味があるのだろう?

ひとり、ホテルの窓からネオンに彩られた、魔物の棲む町を見下ろす。
この光の中に、一体どのくらいの私の様な人間が存在しているんだろう?
ただ生きるために金を稼いで、そしてセックスして、そして死んでいく人生。

そう、愛なんて必要ないと思ってた。
そんなもの、まやかしだと思っていた。
テレビの中のおままごと、どんな感動的なシーンを見ても、どんな愛の言葉を囁く俳優を見ても、ただの絵空事にしか感じなかったんだ。

ただ、出会ってしまった彼に。
その日から、私の止まっていた時間が動き出す。
どこかのアーティストが、人生狂わすタイプって歌っていたのを思い出す。
彼の言葉や言動が、全てうそだったとしても。
それでも私は、一生彼を忘れないで生きていくだろう。
私の最初の恋、そして最期の恋だった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ