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機動戦士ガンダム🎄☃戦場のメリークリスマス🎄☃

第9章 恋人たちのクリスマス

昼間の悪夢が嘘のように静かな夜になった。

今宵だけは幸せな聖夜を過ごしたいという気持ちは敵も味方も皆同じ想いである。

雪景色の夜に、木々をデコレーションして作ったクリスマスツリーが美しく光って素敵なホワイトクリスマスになった。

「メリークリスマス、リリカさん」

カラテはリリカに手作りのケーキを差し出した。
一流のレストランを経営する家に生まれ育ったカラテは幼い頃から料理修行をしていた。
戦争の時代でなかったならシェフの道を歩んでいただろう。

そんなカラテが愛する女性への想いを込めて作った豪華で優しいクリスマスケーキである。

大変な戦いの後で疲れも傷の痛みも堪えて一生懸命にケーキを作ってくれたカラテの姿を思い浮かべるとリリカは胸が熱くなった。今すぐにカラテを抱きしめてあげたい衝動が押し寄せてくるのを打ち消して、冷静な自分に戻った。

「悪いけど、これはいただけないわ。渡すべき人が、一緒に今夜を過ごすべき人が他にいるわ」

リリカに自分でも気づいていなかった本当の気持ちを言い当てられてカラテは衝撃を受ける。そして、本当に愛する人を想って顔を赤くする。

リリカは病室でベッドに寝ているコメットを見舞った。頭に巻かれている包帯が痛々しい。

「ごめんなさい・・あたし・・サイコシステムなんてよく分からないけど・・いっぱい、いっぱい酷いことをしてしまって・・」

コメットは自分が起こしてしまった惨劇を思って真っ青な顔をして震えて涙を流す。
そんなコメットをリリカは優しく抱きしめた。

「悪い夢は忘れなさい。全て終わったのよ。悪夢の世界から王子様が助けてくれた」

リリカの言葉にコメットは顔を赤らめる。子供の頃からいつも一緒にいてくれた人、いつも元気をくれた人、その人への気持ちに今さらながら気づいたのだ。

あの悪魔のような魔神に閉じ込められたのを必死に助けてくれた彼は本当に眩しいヒーローだった。彼の姿を見た時の安心感と嬉しかった感覚は忘れられない。

でも、彼のお姫様は今目の前にいる。

「元気だけが取り柄なヤツですよね。あんなヤツだけどカラテをよろしくお願いします」

切ない想いを隠して笑顔を浮かべるコメットをリリカは優しく撫でてあげる。

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