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妄りな昼下がり(仮)

第2章 雪 30

雪の思考に靄がかかっている。

雪は冷たいキッチンの上で何も掛けずに転がっている。
甘い飲み物が飲みたいけど、母は家に砂糖を置かないので何年前か分からない、金平糖をキッチンの引き出しから見つけてヤカンから入れた麦茶に溶かして飲んでいる。まるで紅茶のような味だ。
砂糖を家に置かないから母の料理は全て辛い、塩か味の素か、醤油で味付けしている。
母は今日も寝室で情事している。
獣のような、けたたましい淫声がキッチンにも聞こえる。
雪は耳を塞いで朝が来るのを待った。

「雪ちゃん、お待たせ。」
嗄れ声のハスキーボイスが聞こえる、思考はクリアになる。誰だ?

雪は顔を見る、男は煙草臭いが、冷たい顔をした美男子だ。

「達也」

そう言った瞬間、雪は夢から覚める。
ハッとさっきの達也と言った事が寝言で成に聞こえていたら。雪は焦る。
しかし成は鼾をかいて寝ている。
雪は安堵して、また眠りにつくことにした。今日初めて会ったばかりの達也が何故夢に出てくるのだろう?不思議だった。

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