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F駅に到着する、駅の喧騒からピアノの音色がする。若い青年が慌しくストリートピアノを叩いている。ピアノは最近駅に設置された物だった。情熱的なのかクールなのか読み取れない表情で青年は、ショパンの「幻想即興曲」を弾いている。誰も聴いていない。F駅の乗車客は皆急いでいるように見えて、曲とのバランスが良くマッチしている気がした。
そろそろ待ち合わせの時間なのに、達也からのLINEは無い。まさか、すっぽかしにあうのだろうか？悪い予感もした。そう思っていると達也からLINEが届く。

「雪ちゃん寝坊しました、20分程遅れます」

雪は溜息をついた、寝坊か・・余り楽しみにもしてないのかな？
人々の思いが交錯する駅で、雪は物思いにふける。
ピアノを弾いている青年の指が叩く鍵盤を間違える。（そこはシじゃなくて、ファ）
ごうごうと電車の音が響くとピアノは中断された。