🌹密会🌹
第8章 🌹December🌹
17時半、格調高い落ち着いた雰囲気のフレンチレストラン、デ アドミラルへ入店。
重厚感溢れるインテリアとシルバーのカトラリー、ワイングラスのセッティング、案内された窓際の席からは運河とクルーザーが見え、まるで水上に浮かんで食事をしているかのような眺望が広がっている。
....彼女にプロポーズでもするつもりだったのかな...。
次々と運ばれてくるフランス料理を慣れないテーブルマナーで頂く一方、脳裏には名前も顔も知らない日比谷教頭の彼女を想像した。
こんなホテルを予約させる魅惑的な女性だから、才色兼備な女性である事に違いない。
若手のエリート弁護士とか、公認会計士とか、美女な上に高級取り...待って...、女優という可能性も....40手前とは思えない端正な顔立ちの黎一さんなら、あり得るかも
「私を前に考え事か...余裕だな。」
「え!?あ、いえ、そんな事では全然なくて...」
「だったら何だ?」
「いや...その...私なんかで良かったのかなって...」
「お前は相変わらず自己評価が低いな。私がどれ程お前に魅了されているか、じっくり語った方が良さそうだ。」
「や、やめて下さい恥ずかしい。」
「何だつまらないな。店は気に入ったか?」
「はい、とても。ロマンティックですし。」
「ならいい。内心、堅苦しい思いをさせてないかと心配だった。」
「え?!いや私にそんな配慮なんてしなくても...日比谷教頭が楽しむべきですし...。」
「私が一人、楽しんでどうする?」
まるでお前が楽しめないと意味が無いと言われているような錯覚に陥りそうで頬が赤く染まっていく。
そろそろ思わせぶりな彼を上手くあしらえるようにならなければいけないのに。
私を誑かして優越感に浸りたいだけの彼の台詞はどこまでも甘美だった。