🌹密会🌹
第10章 🌹March(終章)-1🌹
「....お付き合い頂いてもいいですか?黒崎さん。」
勇気を振り絞って彼にそう伝えると、彼は「俺で良ければ喜んで。」と微笑み返した。
「此処だと人目が気になるだろうし、ホテルに行こうか。」
黒崎の提案に美月はコクリと頷いた。
先に立ち上がり、会計を済ませる為にレジへと向かう黒崎の姿に、美月は慌てて立ち上がる。
「う!...わ!」
大分酒が体内に回っているのか、ぐらりと視界が揺らいだ。
「そんなに慌てたら怪我しちゃうよ。」
地面に激突しそうになった美月の腕を、咄嗟に黒崎が掴んだ。羞恥で頬を染めた美月は、その後大人しく彼の後ろを着いて歩く。
レジのバーテンダーが伝票の金額を言い終える前に、黒崎は万札をドッサリと現金でトレーに置いた。額にしておよそ30万と言ったところだろうか。
「いつもご贔屓にして頂き、ありがとうございます。」
一瞬、戸惑いを見せたレジのバーテンダーに、マスターが目配せをする。
慌ててバーテンダーは、札束を受け取ると、丁寧に黒崎にお辞儀をした。
「行こうか、美月ちゃん。」
蕩けるような笑みを見せると、黒崎は美月に手を伸ばす。美月は何の疑いも、警戒心も持たずにその手を掴んだ。