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副業は魔法少女ッ!

第4章 想いの迷い子


 ひと目でそれと分かる島しか名前の知れない、青と緑の球体を、すぐるは飽きもしないで見つめている。

 今日はクリスマスイヴだ。なずながアルバイトしやすくなるよう、すぐるの不在時間を増やすための行動をしていることは話しているが、それ以外、ゆいかは明珠に報告していない。
 昨年は楽しかった。何の心配事もなかった。有給を取って、朝から二人で県外へ行った。有名なイルミネーションを見るために足を伸ばしたそこで、日没まで買い物を楽しんで、食事も普段より贅沢な店を予約していた。
 今年は、例の施設に関する打ち合わせがあるからと、謝罪してきた彼女の申し訳なさそうな顔を見て、胸を撫で下ろした自分自身にぞっとした。彼女のために生きているのに、彼女と過ごせないでほっとしている。それでは自分は、何のために魔法少女を続けているのか。


 博物館を出ると、街は二人連れの通行人でごった返していた。

 群青を薄めたような空を白く明るめるのは、合理性だけを重点に置いた人工の星だ。

 すぐるの手を取って、拒もうともしない彼をホテル街へ連れて行く。近くに大きな道路と並木道、広場がある。地元なら、この辺りのイルミネーションが一番豪華だ。

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