
副業は魔法少女ッ!
第4章 想いの迷い子
* * * * * *
年が明けて最初のルシナメローゼの出勤日、なずながその場にいた顔触れに、実家から持たされてきたという茶菓子を配っていた。
「ゆいかさんにはウエハース一箱です!お世話になってるから、個別に買っちゃった」
「有り難う。そっか、お正月だったもんね」
「うん、帰省。ゆいかさんは、実家?」
「そ、変わりなく」
「初詣行ったりとかした?やっぱり一色さんと?」
なずなの屈託ない目に頷いて、ゆいかはざっとここ数日のことを彼女に話した。年末、あれだけ人倫に悖っておきながら、年始は何事もなかった顔で、明珠と神社で手を合わせたり、家族と初売りに出かけたりした。その間、彼女はまたあの男と共にいたのか。
「彼も一緒に帰ったの?」
「あ、そうだよ。すぐるくんも」
予想通りの返答に続く通例の惚気は、しかしだんだん、ゆいかの想像を逸した方へ向かっていく。
自身の能力を過信して、他人を平気で見下す男と、長い長い旅路まで連れ立ったのにも関わらず、なずなの顔色は明るかった。彼の話題になると生気を失くすはずなのに、活き活きしている。レースの袖口に覗く手首や顔は、よく見て初めて、僅かな傷が目につく程度だ。
