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副業は魔法少女ッ!

第5章 きららかな表皮にくるまれた残酷


 なつるの立てた仮説は概ね正解だ。

 椿紗は、少女を自我ある怨嗟として生かすために、スピリットジュエリーを利用している。それは魔法少女の死なくして手に入らない。そしてルシナメローゼの怨嗟を還したスピリットジュエリーもどきを使って、彼女を含むルシナメローゼの残滓に養分まで与えている。


「……天方なずな」

「去年入ってきた、不幸な子?」


 椿紗は頷く。

 なつるの固有魔法を前に、黙秘や誤魔化しは無意味だった。椿紗がとぼけても、彼女の功績は他の魔法少女達の信頼を得るには十分だ。昨年夏以来、一度は持ち直した椿紗の信望は、また下落した。オカルト好きの好奇心から魔法少女になった従業員達からも、次々と退職願いが提出された。
 残ったのは、一秒単位で寿命を二等分するつもりらしいゆいかと明珠、ルシナメローゼにいた前世を最近思い出したという栗林と井村、それから、魔法少女そのものに執着しているなずなと、彼女が続けるならと渋々残ったなつるだけだ。


「彼女が残ってくれたのは、不幸中の幸いだと思う。まだ断定出来ないけれど──…」


 ある一つの可能性がある。可能性と言うより断言しても構わないような椿紗の言葉は、少女の顔に赤みを戻した。

 同じ時を過ごした頃、自分は何度、彼女をこんな顔にさせられた試しがあっただろう。………


「椿紗」


 少女の細く白い手が、椿紗の片手をすり抜けた。

 その手とその手を繋ぎたい。抱き締めたい。それはいつ叶うのか、二人して口に出すのは戒めていた。

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