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副業は魔法少女ッ!

第5章 きららかな表皮にくるまれた残酷




 椿紗がルシナメローゼの事務所を出ると、辺りは闇に包まれていた。一月の暮れの寒気は異常だ。昨日までは、事務所とは目と鼻の先にある自宅に戻るだけでも心許なくなっていたのに、頭がいっぱいでそれどころではない。

 焦燥と興奮。

 逸る気持ちに急かされるようにして、椿紗は例の花壇に膝をついた。


「…──っ」


 スピリットジュエリーを吸わせたばかりの依り代は、在りし日のルシナメローゼくらい生気に満ち満ちている。椿紗の呼びかけに、少女はすぐ姿を見せた。

 彼女の姿も、夜空と寒気を失くした辺り一帯も、それまでになく明瞭だ。

 その喜びを噛み締めるのは後に回して、椿紗は少女に、今日の一部終始を話した。朗らかだった彼女の顔のみるみる雲っていく様は、火を見るより明らかだった。


「つまり、魔法少女は、もう……」

「残ったのは六人。死にそうにない子達ばかり」

「…………」


 唇まで血色を失くした少女に伸ばしかけた腕を下ろす。

 ここは、四季の存在しない残影だ。目前の少女の小さな肩が震えていても、その顔色が彼女の死に際を想起させても、同い年だったはずの彼女がすこぶる幼く、身体のところどころが透けている時点で、抱き締めても椿紗の腕がすり抜けるだけだ。

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