
副業は魔法少女ッ!
第5章 きららかな表皮にくるまれた残酷
「私はゆいかがここまでドレスみたいなのを着たところが見たい」
目玉となる新作に注目していたゆいか達の傍らで、明珠が脇にあったラックの一角を瞥見した。
秋頃によく出るタイプのワンピースだ。春めいた素材が何重にも重なったそれは、きたる季節に備えたり、クリスマスパーティーに備えて入手しておいたりするファンも多いのではないか。オーガンジーの花やリボンがスクエアネックを華やげて、同じモチーフがスカート部分にも散らされている。まるく広がる提灯袖は、僅かに腕が透ける仕様だ。オーガンジーやレース生地が重なっていて、軽やかな仕上がりでありながら、豪華で、寒々しさがない。
「改札、引っかかりそう……」
「それ思う!」
「ってか、すごいよね。綺麗。どこから褒めたらいいか分からないよ、ふわふわー」
「ねっ!ゆいかも試着してみてよ」
夢のようなワンピースを眺めるゆいかの視界の端に、それより眩しい明珠の横顔が映る。
優しげに相好を崩す彼女にも、昔、ゆいかは感動のあまり言葉を失くしたことがある。
このワンピースも同じだ。
かき寄せれば間違いなく可憐になるモチーフを欲望のまま集めてきたような逸品でありながら、おそらく花やリボンの配置はもちろんフリルのギャザーの寄せ具合まで計算し尽くされた美は、息を呑む。
