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副業は魔法少女ッ!

第7章 私だけが独りだった




 何も言い返せない。

 一年前、ゆいかは持病が再発した。どこかで選択を誤った覚えも、神に寿命を返さなければならなくなるような悪行を働いた心当たりもなかったのに、突然、一ヶ月先の未来のことも思い描けなくなった。
 世界を恨んだ。愛する人との別れを惜しんで、人間の肉体の脆さを嘆いた。
 壊れたものは戻らない。コップをこぼれた水のように、人間は弱く、生まれてくるのは大事なものを失くすためかと疑った。

 椿紗と彼女の親友は、国の信仰や通り魔の犠牲になって、巡り逢っては引き裂かれてきた。突然の別れを強いられてきた彼女達が、例えば半年、いや、一ヶ月先、幸福な約束事を控えていたら?
 ゆいかには二週間の猶予があった。余命宣告を受けてからの数日は、一時間が一秒のように短く感じられたと言っても、突然、目の前が遮断された彼女らよりは、残されていた時間があった。それからまもなくなつるに出逢ったゆいかと違って、彼女らに、誰も救いの手を差し伸べていなかったとしたら?


「気持ちは、分かる……。東雲さんが彼女を想って、一緒にいたかったのは、魔法少女になる前の私に似てるから……」

「有り難う。なら、私達のために不幸になっても、理不尽には思わないわね」


 同情や共感が、椿紗を癒やす望みはない。

 これまでの何十時間の間にも、それは思い知らされてきた。

 それでも、ゆいかには彼女に説得を試みるしかなす術がない。そうして説得を試みては、彼女の逆鱗に触れている。

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