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副業は魔法少女ッ!

第7章 私だけが独りだった



「ぅくっ」


 確かに捕らえた女の手は、ゆいかの胸をすり抜けた。

 椿紗は片手を引っ込めて、足元に踞ったゆいかを見下ろしていた。



 余裕を誇る嘲笑で、椿紗がゆいかの顎を掴んだ。

 なずなを吸収した石と、ゆいかの目は、二十センチの距離もない。


「あ"あ"っ……」


 椿紗の土足が、鬱血の浮かんだゆいかの右手を踏みつけた。すり潰すかの勢いで、彼女の足先がぐりぐり動く。


「容姿が評判の葉桐さんも、こうして見てればみっともないだけ。ほぼ全裸で何十時間も玩具にされてよがってるなんて、今の姿、現実の人間に見せれば面白いことになりそう。例えば一色さんとか」

「……かく、っ隠すつもりないよ!こんなの浮気にならないし、東雲さんこそ訴訟を起こされる心の準備──…」


パシィィィっ…………


 小気味良い音が、暗い壁に反響した。頬の引き裂けたような痛みに顔をしかめて、ゆいかは自分を打った椿紗の片手と、変わらず光る青い石を呆然と見る。


「心配しないで。貴女達の現実は、じきに壊れる。私達が壊されてきたのと同じで、かたちあるものは壊れる。人も物も、呆気ないでしょう」

「…………」

「貴女達が滅びるか、私達が滅びるか。どちらかは不可避だわ」

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