
副業は魔法少女ッ!
第7章 私だけが独りだった
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八神すぐるに言わせれば、彼の恋人──…天方なずなは、喩えればネジだったらしい。外観は均整のとれた、蓋を開けばとんでもない危険因子を隠蔽していた箱の。
彼女というネジの外された箱は、確かに、押し隠していた爆弾を解放した。特にすぐるは、彼が信じて疑わなかった日常から引きずり出されて、出勤したばかりの明珠には、なつるから緊急の知らせが届いた。
今これから、八神すぐるの実家に行けないか。
早い話が、八神一家は呪われていた。
なずなに暴虐の限りを尽くして、一方で、彼女が離れていくのをこの世の何より恐れている傾向のあった彼自身を含む、幼少期から息子に虐待同様の無視をして、時には手を上げていたという父親、母親も、長い歳月、ルシナメローゼの怨嗟の影響を受けていた。
かつて八神菫子という魔法少女のいた、なずな達の生まれ育った土地。
ただでさえ魔法少女達の退職が相次いでいた今、同業の人間の気配はなく、例の怨嗟が今日まで息を潜めていたのが、不幸中の幸いだった。
