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副業は魔法少女ッ!

第7章 私だけが独りだった


 駅でなつると落ち合って、明珠が問題の現場に行くと、黒い魔物が実体化した。

 およそ七年に亘って、静かに獲物を弄んでいた塊は、魔法少女が二人で手に負えるものではないようだった。それまで明珠の封じてきた怨嗟のどれも、該当する前例がない。なつるもこうした類は初めてのようで、無念に怒り狂いこそしていても、人間的で、知恵さえ垣間見られる対象に、物理攻撃だけでは歯が立たない。
 それでも、なつるの透視は、全ての怨嗟の動きを読めた。彼女のチェーンで動きを止めて、闇を砕く明珠の鞭で薙ぎ払う。


「何で?!消せてるよね?!」


 さしずめ星屑の粒子を放つ鞭は、轟音を吐き出してマグマのようにうごめく怨嗟を、触れた部分から確実に消す。

 通常なら、そうして規模を狭めた怨嗟は、消滅への一途を辿る。ところが、目の前のそれは縮みもしない。ともすれば光を飲み込んで、負の情念を自ら浄化することで、健全な生気を養っているように見える。


「待って、一色さん!攻撃やめて!」


 なつるの悲痛な声に弾かれて、明珠はばら鞭を収めた。

 彼女の拘束をかいくぐった怨嗟の一部が、足首に巻きついてきた。


「くっ」


 魔力を込めた手のひらをかざす。すると、本体から独立してきた塊は、灰色の小動物の姿になった。

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