
副業は魔法少女ッ!
第7章 私だけが独りだった
椿紗も栗林も三代も、名前を訊きそびれていたさっきの女も、夢の中の住人ではない。椿紗の大切な少女でさえ、最後はゆいか達の世界で息を引き取った。それぞれに意思があって、自身の幸福に向かっている。そこに現実も架空も関係あるまい。どちらかが犠牲になるよう仕組んだのが神だとすれば、それは神と呼べるのか。
「きっと、私達が希望を持って、祈りや願いに頼らなければ、ルシナメローゼは消えるんでしょうね」
「…………」
「この世界は、私達の心の避難所だったから。理想が一人歩きした場所。なつるさんには、もうどうすれば消せるか見えてるんじゃないですか?」
なつるの顔色が変わった。彼女の顔が、ゆいかに答えを寄越していた。
彼女は、八神すぐるの家族を助けたことを悔いていた。彼が傍若無人のままであれば、いつか、彼女がなずなの恩人になれると期待していたからだ。優しく傷つきやすい、それでいて熱い意思を貫き通すなずなの姿を、もっと近くで感じたい。戦う姿があれだけ眩しい魔法少女の後輩は、彼女にとって、なずなが初めてだったという。憑き物の取れたすぐるは、平凡で無害の青年になった。彼女には、菫子を慕うなずなが昨日までの彼を許すのが、固有魔法を使うまでもなく目に見えている。
