
副業は魔法少女ッ!
第3章 ガラスの靴の正体は
「一緒にいて幸せになれるところ」
明珠のどこに惹かれたか、長所を挙げれば、ゆいかこそ本一冊書ける。執筆した後味は、きっと幸福という感情に尽きる。
「私も」
つと、初夏の爽やかな風を想起させる声がした。
「あっ、明珠?!」
「お疲れ様。さっきのお客様をお見送りに行ったら、貴女達が見えて……」
ふらりとラウンジに立ち寄ると、気になる話題が耳に触れた。つい耳を澄ましていると、自分に話題が向いているではないか。
聞き入ってしまったという代表取締役に、ゆいかの後輩達が、目をとろりとさせている。
「ゆいかといたら、幸せよ。なんて、聞こえがいいでしょう」
小ざっぱりしたスーツを粋に着こなした明珠の腕が、まるでそよ風に操られた花がじゃれつく風に、ゆいかに絡みついてきた。柔らかな乳房に後頭部が包まれる。
「最初は見た目にひと目惚れしたんだ。ゆいかって可愛いじゃない?恋人がいないか冷や冷やしながら」
「明珠、こそ……恋人のいない期間があるようには見えないくらい……素敵だよ?」
「そうだね。もうきっと、お一人様の期間とは無縁」
ゆいかは、鎖骨付近に重なった明珠の両手に手のひらを乗せた。
明園と松原の赤いチークの浮かんだ頬に、より血色を増していた。
