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ほしとたいようの診察室

第2章 遠い記憶と健康診断



……ここで、聴診する?!

いま、なんか、胸の音やばい気がするけれど……!

「あ、や……」


するり、と服の裾から聴診器を入れる。にっこりと吹田先生が、意地悪な表情を浮かべていた。

ぴったり、聴診器が遠慮がちな胸の膨らみに当てられる。

「息止めないで、吸って。そう……吐いて」

言われるとおりに呼吸を繰り返す。
胸の音を聴いているときの吹田先生の顔は、すごく真剣で……。
背中側からも同じく音を聴いてから、吹田先生はカルテに目を通しながら言った。

「うん、いまのところは大丈夫そう。ちょっと心拍速いみたいだけど」

吹田先生のせいで速くなった心拍だ……。
昔の話なんて、したから。

少し不服な表情を浮かべてみるけれど、吹田先生の笑顔で全て丸め込まれる。

「でも、のんちゃん」

聴診器を肩から下げ直しながら、もう一度、真剣な目でわたしの顔を覗き込む。


「環境が変わると、体がそれについていくのに必死になるからね。子どもの頃にやってた喘息とか、血液の病気が再発することもゼロではないよ。少しでもおかしいと思ったら、内科に来ること。いいね?」


……再発。発作の息苦しさや、頻回に採血していたことを思い出して、生唾を飲む。本当にこれは、大学2年間の皆勤だけでは心もとない。


「のんちゃん、返事」

「……は、はい。気をつけて働きます」

「うん、よろしい。じゃ、次行っていいよ。あとは……採血だね。頑張って」


吹田先生は、これまた不敵な笑顔を浮かべて、診察室からわたしを見送った。

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