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ほしとたいようの診察室

第2章 遠い記憶と健康診断


残るは採血……。

痛いし、怖いし、小さい頃から逃げ回っていた。注射針が侵入してくる、あの瞬間が嫌でたまらないのだ。

今日は健康診断終わったらそのまま帰っていいみたいだし。
もう帰っちゃうか。
1人くらい採血受けなくてもわからないしね……。
優先生と陽太先生には、また今度挨拶しようかな……。

ふと、逃げの思考に囚われて、回れ右して玄関を目指そうとしたその時……。




「問診票、確認しますね」




まさに、採血の会場に背中を向けた時、両肩を掴まれてビクッと体が弾む。

今度は、頭1つ分くらい身長が高い、男性の看護師が、わたしの背後をとっていた。

「ひゃっ……!」

恐る恐る振り向いて、俯きながら問診票を手渡す。心の中を読まれたみたいで、なんとなく怒られるような気がして縮こまる。


……しかし、響いた声は、叱咤ではなかった。


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