ほしとたいようの診察室
第2章 遠い記憶と健康診断
驚いて顔を上げると、陽太先生がもう一度わたしの頭を撫でた。
感慨深そうに、陽太先生の心の底から出てきた言葉に包まれるようだった。
「大きくなった、本当に」
本当に、嬉しそうにしてくれるから。
わたしは心の底がくすぐられて、変な表情になっている気がする。
「……もう、そんな子どもじゃないです……」
苦し紛れに声を絞り出すと、陽太先生が声を上げて笑う。
「ごめんごめん……でも困った時に、1人でどうにかしようとするのは、変わってないね」
「……そんなこと……!」
「ある。ちゃんと周りの人に助けを求められないと。雨の中、走って帰ったら風邪ひくよ? 皆勤賞、継続してほしいしね」
「…………!!」
「蒼音くんから聞いたよ。すごいじゃん、あののんちゃんが2年も体調崩さずに頑張ってたなんて」
陽太先生がまっすぐ目を見つめてそんなことを言うから、頬が赤い。また俯くことになってしまう。
……もう少し、しっかり目を見て話したいのに。
「傘、受付で貸せるから、ちゃんと借りていって帰りなね」
陽太先生は、最後にもう一度だけ頭を撫でると、小児科病棟の方へ歩いていった。
去っていく大きな背中を見送りながら、胸がチクッと痛む。
……久しぶりに話したのに。
全然、言葉が出てこなかった。
言われた通り、受付で傘を借りて、雨の中へ入っていく。家路を辿りながら、複雑な気持ちを抱えていた。