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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 4 お盆休みの予定

「健太はさぁ、お盆休み予定あんの…」
 わたしは本社からの帰りのタクシーの中で、突然健太にそう訊いた。
 ちょっと気になる事があったのである。


「えっ、なんか誘ってくれんですかぁ」
 すると健太は、いつもの調子で軽く返事をしてきた。

「ばぁか、違うわよ、それにわたし前半仕事だし…」

「えっ、そうなんですかぁ」

 そうなのだ、コールセンター部の損害保険部門は年中無休、24時間対応だから、こんな連休には緊急事態が起きた場合を想定し、必ず社員を当番で最低一人は待機をさせるのである。

「それに例のテレビ局の仕事の打ち合わせもあるし…さ」
「なるほど…」

「だから今回は待機って事にして、都内にはいるつもりなの」
 わたしがそう言うと…
「俺は…一応、予約はしてあるんですが…」
 健太はそう答えてきたのである。
 
「ふぅん、どこ行くのよぉ」
 思わず訊いてしまった。

「き、京都っす…」
 すると健太はスッと答える。

 その様子は、まるであの頃の…
 そう、わたしが『姫』と崇められていた大学生時代に、いつもわたしの周りに下僕的にくっ付いていたあの頃的な返事の仕方に感じたのだ。

「へぇ、京都ぉ、いいなぁ…」
 そんな健太の『京都旅行』の予定が意外に感じた。
 そして少し羨ましくも感じていたのである。

 まさか…

「え、あ、まあ…」
 そしてそのまさか…の思いを感じ取ったのか少し言い澱む。

「わたしさぁ、海外ばかり行っててさぁ、意外に国内旅行って殆ど行ってないのよねぇ…」
 しかしわたしはそんな健太の様子等には構わずに話しをしていく。
 
 そして本当に少し羨ましかったのである…

「あ、はぁ…」
 すっかり健太はあの頃の感じになって答えてきていた。

 このタクシー内という、ある意味、密室での二人の会話…
 こんなシチュエーションが、健太を少し戸惑わせているのかもしれない。


「しかも国内はさぁ、ダイビングスポットばっかりでさぁ、京都みたい、静かな、しっぽりとなんてさぁ…」

 しかしわたしはそんな健太の様子などお構いなしで話しを続けていき…

「誰と行くのよっ」
 少し気になっていた確信の想いの質問をしたのである。


「えっ、あ…」
 健太が敏感に反応してきたのだ。

 そして、すっかり動揺している感じであった…




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