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シャイニーストッキング

第3章 絡まるストッキング2 美冴

 52 これから…

 俺は走り去っていく蒼井美冴さんのタクシーを見送ってから自分もタクシーに乗った。

「ふうぅ…」
 座席に座ると無意識にため息が漏れた。 
 それは想いがけない今夜の展開と、さっき美冴さんから聞いた驚きの話しのせいのため息なんだと思われたのだ。

 なんか予想以上にすごい話しだったなぁ…

 確か、今年の6月頃に『黒い女』という存在の噂を聞いていた。
 それは憧れの佐々木ゆかり先輩の存在を春先に知り、そして自分なりの人脈を使ってゆかり先輩、いや、当時の佐々木ゆかり課長のいるコールセンター部を含めてのリサーチをしていた時にその存在も耳にしたのであったのだ。

 いつも、季節、気温に関係なく全身真っ黒の服装の派遣社員の女性がいるらしい…

 しかもいい女らしいぞ…
 等々、そんな噂が聞こえてはいたのであった。

「それじゃあ、毎日葬式みたいじゃん…」
 そんな噂を軽く流して聞いていたのだ。

 だが、本当の話しだったのだ…
 最愛の婚約者が突然に災害で亡くなったのだ、それから立ち直る為の自分に課した想いの現れがその『黒い女』という存在だったのである。
 そして全ての希望や欲望を抑えて約二年間も生きてきての、突然の先週末の覚醒なんだと美冴さんは言った。
 
 それは自律神経もおかしくなるのは当然だろう…
 まだ覚醒してから僅かに一週間しか経っていないのだから。

 だが、どうやら7割位までしか本当の話しはしてくれてはいない…
 そう俺は感じてもいた。
 だが、それは仕方ない事でもあるのだ。
 なぜなら、まだ美冴さんと知り合って僅か二日間しか経っていないのだから…
 こんな関係になった事自体が、予想外の急展開なのであるのだから。

 7割でも話してくれて嬉しい…
 だが、内容が内容なのだ、俺の責任はかなり重い。
 しかし、今となれば一昨日の朝の初めて見掛けた印象通り、いや、それ以上に美冴さんの魅力に惹かれ、瞬く間に魅了されてしまっていたのだ。

 こんな出会いでもいいんだ、これからは美冴さんを愛していくんだ…
 そしてそれが美冴さんに勝る佐々木ゆかり先輩への長年の想いを、乗り越えていく事になるのだ、と、心に強く感じているのである。

 これからは美冴さんを愛して、守って行くんだ…

 第8章 絡まるストッキング2 蒼井美冴

         完


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