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第4章 合宿

合宿2日目、朝起きると、洗面所で安田と会った。

「おはよう!夜は眠れた?」

と安田が言った。僕は、

「いつまでもドキドキして眠れなかった!」

と言うと、安田は、

「私は眠れたわよ!安心して、ぐっすり……。久しぶりによく眠れたの!不安が消えるって、幸せ!」

と言って、笑顔を見せた。

そこへ向こうから、何人かこちらへ向かってくるのが見えた。安田が、

「またね!」

と言い、僕も

「またね!」

と言って、お互いに、手を軽く合わせて、別れた。

僕と安田は、たぶん似たような性格だと思う。安田は、顔が派手で見た目では、どこにいても目立ってしまうのだが、自ら目立とうとすることはない。

それに、自分が男からモテることも分かっているし、もし、安田が僕のことを好きだということが世間に知れたら、僕が学校中の男を敵に回さなければならなくなることも知っている。だから安田も、大っぴらに僕とはイチャイチャしないのである。

例えお互いが好きあってても、人前では、それを知られないようにするのが、僕と安田の暗黙の了解だった。似た者同士、話さなくても自然とそういう行動をするのだった。

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