夢魔
第5章 永劫の楽天地
「おーい、いたか?」
茂みを掻き分けて、二人の男が林の中を歩いていた。
揃いの制服らしきものを身に付けた、街の刑吏だった。
「いや、こっちには」
一旦合流した男たちは疲れた、とばかりに林にある手頃な木の幹にもたれる。
「にしても、突然兄弟が消えるってのもなあ」
休憩ついでにポケットから煙草を取り出し、そう言う不可解な表情の同僚へとそれを差し出す。
煙をくゆらせ、しばしの雑談が辺りの静寂に混ざった。
「学者先生んとこだろ? あの息子も息子だ。 随分と前に学校辞めて、家でフラフラしてたって。 後からの学校からの報告からは、随分素行が悪かったらしいと」
「色んな娘騙して拐かしてたってな。 それでも妹の方はまともだったからねえ。 あそこの奥さん、寝込んで起きられないらしいぜ。 父親も兄が連れ出したんじゃないかって必死で探し回って」
あんな天使みたいな綺麗な顔して人は見掛けによんないもんだ、そんな事を呟きもう一人が首を振る。
「そういや、この辺に空き家無かったか?」
一服も終わり、仕事を再開と伸びをしてから同僚が先に立った男にに続いた。
「そうだっけ? でも、見当たらないしな、この先に民家があるから、そっちで聞いてみようぜ」