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短編集 一区間のラブストーリー

第7章 短編その七


翔太は久しぶりに帰省してみた。

大学生の翔太は思うような就活を展開できずに少々落ち込んでいた。

最寄りの駅には兄貴の嫁である千佳子が迎えに来てくれていた。

義姉の千佳子とは兄貴との結婚式で一度会っただけなので
車に乗り込んでもちょっぴり気まずい空気が流れた。


思えば「お帰りなさい」と義姉が話しかけ
「ただいま…迎えに来てもらってすいません」と俺があいさつしてから
一言も言葉を交わしていなかった。


「あの…」

「えっと…」

二人同時に声を掛け合った。

どうやら義姉もこのまま無言ではいけないと思っていたようだ。


「あ、どうぞ千佳子さんから」

「ううん、翔太くんからどうぞ」

どうせ義姉も気まずさに耐えかねて言葉をかけただけなのだろう。

俺が何か言いかけたのを幸いとばかりに発言を譲ってくれた。

俺とて特に話しかける会話もなかったのだが、
ここはひとつ男として会話のイニシアティブを取らねばと思った。


「えっと…千佳子さん綺麗なのに、こんな軽トラなんてイヤじゃないですか?」

俺自身、突拍子もなくダサい質問をしてしまったと赤面してしまった。

「農家の嫁だもん、この車が私にはお似合いよ」

「そんなことないですよ。中古車でもいいから可愛い軽四でも買えばいいのに
千佳子さんみたいな美人が軽トラなんって…」

「うふふ…あんまり綺麗だと言っても何も出ませんわよ」

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