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カクテル好きの女たち

第6章 女性教師の憂鬱


「お客さん、
ここは娘さんを連れてくる店ではないですよ」

店のマスターが制服姿の祈愛(のあ)を見つめて
私に苦情を言いました。


「すいません」
平謝りで彼女の手を取って
出ていこうとするのを彼女は振り払いました。

「ノンアルコールぐらいあるんでしょ?
それを出してよ」

悪態をつくと
祈愛はソファにどっかりと腰を落としました。


面倒な客だなと露骨に表情に出しながら
マスターはコーヒーを煎れ始めました。


「せめてお母さんには
カクテルを呑んでもらいますよ
コーヒーじゃ売り上げが薄いんでね」

「母親じゃありません」

「こんなやつ母親じゃないしぃ」

二人して否定の声をあげましたが
マスターはどうでもいいと
謝罪の言葉を口にしませんでした。


「はい、コーヒーです。
それとあなたには
『モスコミュール』をどうぞ」

仲直りというカクテル言葉があるんですよと
マスターは解説してくれた。


私は誠意をもって祈愛に語り掛けましたが
まったく彼女の心に響いてくれないようです。

「この子は愛に飢えているんですよ」

ふいにマスターが
会話に割り込み私たちのソファに座りました。


「ちょっと、おっさんは関係ねえだろ!」

睨み付ける折愛の頬に手を添えて
いきなりマスターがキスをしました。
彼はキスだけじゃなく
彼女の胸も揉み始めました。

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