カクテル好きの女たち
第8章 女子高生
私、木下折愛(のあ)は、
あれ以来イライラしていました。
思春期特有の情緒不安定と
思われる方もいるでしょうけど
自分自身の事は自分が一番わかってます。
イライラの原因はあの夜、
飛び込んだお店のマスターに
不意にキスされたこと。
いえ、キスされたことよりも
それに怖じけづいて
店を飛び出してしまった自分の情けなさに
イライラしていると
言ってもいいかもしれません。
どうにかして、
あのオヤジをギャフンと言わせてやろう…
そうだわ!
あいつを警察につき出してやろう。
同意なしにキスしたんだもん
強制猥褻罪が成立するわよね。
私は意を決して交番に飛び込みました。
そこには一人の婦警さんが
つまらなさそうに
書類を書いていました。
私に気づくと「どうかされましたかぁ~」と
やる気のなさそうな声で問いかけてきました。
「私、無理やりキスされました!」
そう言うと「詳しく話して頂戴」と
俄然やる気を見せ始めました。
しかし、私がお店の場所と
マスターの特長を伝えると
「そう、じゃあ私から
きつくお灸を据えとくわ」と
再び何事もなかったかのように
書類に目を落とし始めました。
『何よ!役に立たない婦警ね!』
正直、ここまで警察が
あてにならないとは思いもよりませんでした。
こうなりゃ直接お店に乗り込んで、
あのオヤジから
慰謝料をぶんどってやろうと思いました。