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雨の降る夜は傍にいて…

第3章 9月の雨(September Rain)

 22 マスター⑧

 あまり束縛はしてこない…

 それに妻子持ちはどことなく心に余裕があって、セックスも上手である…

 そして、なにより、ちゃんと避妊をしてくれる…

 これが、この微妙な距離感が、わたしには実に気楽で、快適であったのである。
 そして何よりも、相手にとってもほぼ遊び相手なのであった。

『それって、ただの、都合の良い女なんじゃないの…』 
 と、友達が云ってきた。

 都合の良い女…
 それのどこが悪いのだ。

 わたしにだって都合がある、そして都合が悪い、予定が合わなければ無理に会いたくはない…

 だから、こちらもタイミングが合わなければ我慢する…

 都合が悪いのに、無理矢理に呼び出しされるのはごめんなのだ。

『でも、それが、付き合うって事で…
 彼氏、彼女の関係なんじゃないの…』
 友達がそう云った。


『それって、お互いを束縛するって事じゃないの…』
 と、わたしが問うと。

『ま、そういう事になるのかなぁ…』
 友達はそう云ったのだ。

 それはまっぴら御免なのである。
 
 だったら、相手は妻子持ちのような不倫の関係がよい…

 束縛されたくはない…

 それに妻子持ちは、心に余裕があって、セックスも上手である…

 そして、なにより、ちゃんと避妊をしてくれる…

 それは妻子持ちだから病気が恐い、そして、不必要な妊娠が面倒だからであった。

『それって、ゆり、あなたが変わっているわよ、それじゃあ、セフレじゃないの…』
 
 セフレか…

 その時、わたしは初めて知ったのである。

 そうか、わたしが欲しいのは彼氏ではなくセフレなのだ…

 




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