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雨の降る夜は傍にいて…

第5章 秋冷え…

 19 ダブルショック

「ステーキハウスでウチのと逢っちゃったんだって?」
 夜、帰宅して、シャワーを浴び、寝支度を整えていたら、彼から電話が着信した。

「うん…」

「店長から訊いたよ」

「うん…」

「今夜、ちょっと行ってもいいよな…」

「…………」
 あのステーキハウスからずっと罪悪感に苛まされていて、どうしようか迷ってしまう。

「ダメでも行くけど…」
 もうこの時には彼はわたしの部屋の合鍵を持っていた、さすがにチェーンロックを掛ける程、拒否をするつもりは起こらない。

「………うん…」
 基本、わたしは朝は6時少し前に起きる、そして7時過ぎには学校に行き、早朝練習を見る、そんな日常なので彼との逢瀬は週末が殆どであり、平日の場合は彼が早目にスポーツバーを抜け出して来きて、わたしを愛し、その後再びスポーツバーに戻るというパターンが多い。
 そして今夜は日曜日の夜の午後11時過ぎである、多分、間もなく彼が来ると想われた。

 奥様との遭遇と、娘の認識というダブルショックを慰めるつもりなのであろう…
 と、思われた。

 確かにダブルのショックではあった。
 そして否が応でも、せっかく薄らいでいた『不倫』という罪悪感が再び高まってきていた。
 だが、もう、既にわたしは彼を心底愛してしまっていたのだ、そして心も、カラダも彼の虜となりつつあったのである。
 だから、いくらこんなダブルショックを受けてしまったとはいえ、彼と別れるという選択肢は無かったのであった。

 だが、奥様と娘を認識してしまったというショック、心の衝撃、動揺はかなり大きかったのである。
 そしてそれにより『不倫』という想いと罪悪感が再び大きく心の中で膨らんできていた。
 この時点では、どうしたらよいのか、分からなかったのである。

 ただ、本音は逢いたい…

 抱かれたい…

 この揺れている心を抱き締め、めちゃくちゃに感じさせて、忘れさせて欲しかったのではあったのだ。

 でも…

 心が揺れ動いていた。


『ピンポーン…』

 玄関チャイムが鳴り響く…

 彼が来た。





 

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