テキストサイズ

雨の降る夜は傍にいて…

第5章 秋冷え…

 56 絶妙的なトライアングル

「じゃあ帰りますね…」
 わたしはとりあえず大阪インターハイのお土産を渡し、サッパリとしたジントニックを一杯だけ飲んで帰りを告げる。

「あっ、帰るのか」
 
「はい、疲れちゃったから…」
 とりあえず言葉ではそう言ったのだが、
 待ってるわ…
 と、目でそう浩司に語り掛けた。

「とりあえず、明日、明後日と完全オフにしたの…」
 そう伝えると、彼は黙って頷いた。

 一応、周りのスタッフや、お客の誰かがわたし達の会話を聞いているかはわからない。
 だから芝居じみた会話とお互いに思っているのだが、念には念を押しての用心として迂闊な会話をしないようにはしていた。

 わたし的には、既に、奥様と娘さんに対しての免疫的なモノは付いたのではあるが、あくまでもその免疫的なモノは不倫関係の秘密を維持している事がもちろん大前提であり、決してバレてはいけないのである。

 結局はわたし達の関係は禁断の『不倫』なのには変わらないのだから、バレてしまっては全てが終わってしまうのだ…

 それに、わたし、奥様、娘の美香ちゃん、このトライアングル的な三角関係が絶妙的で微妙にバランスを保っているのであったから、より細心な注意が必要なのだ。
 そしてこの夏に、美香ちゃんは全日本アンダー15に選抜選考されたのである。
 だからこそ更に、細心に、余計に注意しなくてはならない。

 なぜなら、最悪な結果で、まだ中学生という微妙な年頃の彼女を傷つたくはなかったから…
 そして哀しませたくはないからだ。


 わたしは帰宅をし、寝支度を整えて浩司を待つ。
 インターハイの前後に遠征試合を組んでいたから、合計日数は約二週間という長期の遠征になった為に浩司との逢瀬も本当に久しぶりなのだ。

 そしてインターハイの結果も上々であったし、その前後に組んでいた強豪高校との練習試合にもかなりの手応えを感じていたから、わたし的にはなかなかの昂ぶりを感じていたのであった。

 早く抱かれて、この昂ぶりの興奮を鎮めたかったのである…

 そして夕方に彼の奥様にも帰途の挨拶を兼ねての電話で少し会話を交わしていたから、ヒリヒリとした背徳感と罪悪感のスパイス的な刺激も相乗していたのだ。

 後は彼に抱かれて、愛されるだけなのである…






ストーリーメニュー

TOPTOPへ