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　58　熱い夜　①

　ピンポーン…

　その時、玄関チャイムが鳴った。

　ようやく浩司が来宅したのだ。

　ガチャ…

　彼は自らの合鍵でドアを開けて入ってくる。

「あ…、ゆり…」

　彼は部屋に入るなり、わたしの痴態を見て思わず名前を呟いた。

　その顔には
　お前のその痴態はわかっていたさ…
　みたいな顔をしていた。

　わたしが不倫という背徳感と罪悪感というモノをセックスの快感のスパイス的に捉える様になってからは、こうして待ちきれなくて自慰をしている姿を彼はもう何度となく見ていたのだ。

「今夜も熱いのか…」
　彼はそう呟いてきたのだが、その顔にはこんなわたしの痴態に呆れたという表情ではなく、やはり、約二週間以上もわたしの遠征によりお預けをさせられていた昂ぶりの表情といえたのである。

「うん…、熱いの…」
　わたしは自らを弄りながらそう呟いた。

　既に彼にはこの痴態は予測できていた様であったらしい。

　最近のパターンでの、バスケット指導の好成績の興奮と昂ぶりの淫らに乱れるわたしの心境は手に取る様に解っているのであろう…

「俺も今夜は熱いぜ…」
　彼も、そう呟きながら自らの服を脱ぎ始める。
　
　願ってもない…

　だが、わたしはバスケット指導の興奮の昂ぶりだけではないのである、その昂ぶりと、二週間以上のお預けにプラスして更に夕方に奥様とメールを交わしたというヒリヒリとした不倫のスパイスも刺激に加わっていたのだ。
　
　だが、このスパイス云々については間違っても彼には云えない秘密なのである…
　だが、しかし、この秘密の想いが更に昂ぶりを増してくるのである。

　彼はわたしを抱き寄せながらキスをする。

　ああ、浩司…

　そのキスに心が震え、瞬く間に蕩けてしまう。

　ああ、今夜は激しく、淫らに、そしてぐちゃぐちゃにして欲しい…

　わたしはそんな欲情の欲望を、目に込めて彼を見つめていく。

　熱い夜が始まる…