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雨の降る夜は傍にいて…

第6章  小夜時雨(さよしぐれ)…

 17 現実からの逃避

 確かにそうなのかもしれない。 
 高校バスケットの決勝リーグの観客数は県内で一番大きなアリーナを満席にしてしまうのだ。
 そして決勝リーグ戦や、決勝戦は、そんな大きなアリーナ会場の4面取れるコートを一つにして行われるのである。

 だから注目度はかなりのモノなのだ…

 そしてその高校バスケット界だけではなく、決勝リーグ等になればミニバスケから始まり中学、高校、大学、社会人等のバスケット関係者までもが観覧している筈なのである。
 そこにその連れ合いの方々、親御さん等々を加えてそれを合わせていって数えたら相当数に上るであろう。

 それら相当数の人々がわたし達の高校チームを見ている、そして当然、ゲーム中にベンチ前で檄を飛ばしているわたしをも観ている筈なのである。

 確かに、言い得て妙だわ…

 しかもつい最近、地元新聞社による県内在住の職種を問わない女性のアップカマーの特集記事の一つとして、新聞記事の記載もされてしまっていたのであった。

 だからそれを踏まえると、認知度はかなりの数になるのだ…

 そしてこんな地方都市の街である、ちょっとした繁華街やショッピングモール等の人々が集まる場所で、誰かに見られていても何の不思議はないのである。

 気をつけなければ…
 と、ついこの前、そう実感したばっかりなのであった。

 そして、それは…

 不倫という禁断な、秘密の関係の最大の敵でもある…
 とも、痛感していたのである。

 …だから、浩司の云っている事は良く分かるし、いや、分かっていたのだ…

 でも…

 でも、馬鹿で間抜けなわたしは…

 何とかなる…

 何とかする…

 何とかしてみせる…

 と、気楽に考えていたのだ。
 いや、考えないようにしていたのであった。

 しかし、それは、内心、心の奥深くでは常に警告を放ってきており、そしてその警告は日々、少しずつ重なり、強くなってきているのも自覚をしていたのではあるのだが…

 わたしはそれらの現実から無視を、いや、考える事から…  

 逃げていた…

 避けていた…

 わたしは分かっていながらも、現実から逃避していたのである。



 実は、浩司に云われなくたって、十分に分かっていた事なのだ…




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