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雨の降る夜は傍にいて…

第2章 春雷

 31 心の衝動

「ゆり姉ちゃんっ…」
 俺はすっかり興奮し、感極まってしまい、ゆり姉ちゃんの腕を掴んで引っ張った。

「あっ、け、啓ちゃん…」
 そして俺はゆり姉ちゃんをグイっと引き寄せて、抱き締める。

 我慢できなかった…
 憧れの衝動を抑えられなかった…

 ゴロゴロゴロゴロ…

 春雷の雷鳴が再び音を大きく響かせてくる。

 ゴロゴロゴロゴロ…

 再び春雷が戻ってきたようだ。

 ゆり姉ちゃん…

「ね、ねえ、どっち…なの…」
 すると、ゆり姉ちゃんは抱き締められながら、そう呟いてきたのだ。
 
 混乱しているのか…

「ただし…だよ…」
 俺は悔しいけれどそう言って兄貴のフリをすることにした。
 
 だってあのこの頃はまだ10歳の子供だったのだ、悔しいけれどあのこの頃と比べたら絶対に兄貴には勝てないのだから…


 ゴロゴロゴロゴロ…

 再びすぐ近くで春雷の雷鳴が鳴り響いてくる…








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