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　2　さすが彩ちゃん

「あっ、もしかしてぇ…」

　さすが、元ヤン、ヤリマンの彩ちゃんにはピンときたらしい…

「うん、そうなの…」

「そうなんですかぁ、でもあの専務、まあまあのいい男じゃなかったですかぁ…」
　と、彩ちゃんは言ってくる。

「うん…
　まあまあなんだけどさぁ…
　なんとなく…ね…
　それに今夜も、雨みたいだしさ…」

「あっ、そうか、雨かぁ…
　社長ぉ、雨の夜ってぇ、ヤバいですもんねぇ…」

　そうなのである、彩ちゃん曰く、雨、それも台風や、それに近い大雨、もしくはこんな秋の長雨の夜には決まってわたしは男漁りをしている…
　の、だと言ってくるのである。

　わたし的には決して男漁りをしているつもりはないのではあるが、他人から、ましてや身近な存在の彩ちゃんから見たら、いや、彩ちゃんにでさえ結果的には男漁りと云われても仕方が無いような事実に近い事をしてはいたのであった。

「うん、そうなの…」
　ここはお願いをする訳だし、長々と言い訳をしても仕方がないのですんなりと認めたのだ。

「そうなのよ、この連日の雨だから…
　ヤバいかも…なのよ
　だから、ここは彩ちゃんに一つお願いをしようかなって…さぁ…」

　そうなのである、現実に昨夜からこの連日の雨と、遥か沖縄付近に停滞している台風の大型低気圧の影響が、わたしの不安定な自律神経をウズウズと悪戯してきているのだ。
　そんな時は、流れよっては、この自律神経の悪戯のせいの衝動で、簡単に口説き落とされてしまう可能性があるのだ。
　そしてもちろんな事なのだが、仕事上での関係者とは公私混同の関係にはなりたくないのである。

　だから、出来ればこの専務と二人切りのシチュエーションは避けたかったのである…


「はい、そういう事なら喜んでお供致しますぅ」
　そんなわたしの想いをサッと察知した彩ちゃんは、軽く了承し、快諾してくれたのである。

「彩ちゃん、あ、ありがとう…」

「いいえ、でもぉ…」
　すると彩ちゃんはわたしにふと、訊いてきたのだ。

「もしもぉ、わたしが口説かれたらぁ…
　あの専務とぉ、ヤッちゃってもいいんですかぁ…」

　さすが彩ちゃんである…


　わたしはニヤリと笑みを浮かべ、頷いた。