恋人は社長令嬢
第8章 異性の友達ってヤツ
「ねえ、お願いがあるんだけど、いいかな?」
那々香は、近くにいる女の子達に、声を掛けた。
「明日の会議で使う資料が、まだ全部出来上がってないの。手伝ってもらえないかなあ……」
女の子達は、シーンとして、答えもくれない。
「行こう。」
一人が、みんなに言った。
「大村課長を差し置いて、本社に残った人だもの。私達の助けなんかいらないくらいに、優秀な人なんでしょう。」
そう言って、みんなはフロアを出て行った。
一人フロアに残り、一部ずつ閉じていく那々香。
大村課長を差し置いて、本社に残った人。
その言葉が、那々香の胸を突き刺した。
あの日亮介は、奥さんを送って会社に戻った後、社長である父に呼ばれた。
那々香は、みんなに気づかれないように、社長室の廊下の角で待っていた。