👿サディステック👼エンジェル
第11章 誰も知らない――――…
記憶を無くして――――10年。
俺は、27歳となり…新しい養父の元で農業をしている。
「お父さ――――ん!」
「悠蘭(ゆうらん)危ないぞ――――!走るなぁ!」
そして、俺は――――父親になった。
三年前、養父の元で知り合った女性と結婚し…二児の父となった。
長女は3歳――――お姉さんを気取りたいのか、昨年生れたてばかりの弟に良いところを見せたいのか、俺と養父の働く田んぼや畑の手伝いをしてくれる。
長男は、今月で8か月となる…首が座りやっと、離乳食を食べはじめた。
俺は――――17歳までの記憶が無い。
17歳の時に、大きな事件に巻き込まれショックで記憶を無くしたと聞いている。
目が覚めたときには――――…自分が誰なのか…なぜここにいるのか…全く思い出せず…戸惑った。
しかし、生活する基本的な事は分かるし――――自分が日本人だと言うことも…分かる。
ただ、17歳までの――――自分の生きてきた記憶が無いのだ。
両親の名前も顔も思い出せない。
自分の本来の名前を聞いてもピンと来ない。
本当に――――…全く分からないのだ。